ノスタルジックな赤い土壁
出石城下町を出石酒造に向かって歩いていると、赤い土壁が特徴的な酒蔵が見えてきます。
この酒蔵は270年以上前に作られました。通常は2~3層塗って、その上に白い漆喰を塗りますが、この酒蔵は6層塗りで壁の厚さは約40㎝、壁を塗るだけで2~3年かかります。それだけ手間をかけていることには理由があります。
この地域は、夏はとても暑く冬はぐっと冷え込み、寒暖の差が激しく、お酒にとっては大きなストレスになってしまいます。壁を厚くすることでその気温の変化をなだらかにします。また出石町のある山陰地方は湿気が多く、その水分を土壁が吸収してくれるようにもなっており、火災にも強いのだとか。
明治9年(1876)の大火により、出石城下町の7割が火に飲まれましたが、酒蔵の一部は残り、母屋や一部の酒蔵は建て直されました。現在もこの酒蔵を瓶詰めと貯蔵のために使っています。
床板の下にはヒミツの階段が
暖簾をくぐって母屋へ入ると、14代目社長中易裕明さんが、とても気さくに色々なお話をしてくださいます。酒蔵のこと、出石の町のこと、美味しいお酒の飲み方など、質問してみてください!
出石酒造の歴史を尋ねると「水がいい。いい井戸水があるから、ここで醸造をするようになりました」とのこと。そして、ひときわ存在感を放っているのが、この大きなお釜。
「以前は、この釜で酒米を蒸していました。足元の床板を開けると、下は階段になっていて、釜の真下に焚口があるんですよ。この釜でお湯を沸かして、上に『甑(こしき)』という蒸篭(せいろ)みたいなものを載せて、一回に1000キロくらい蒸す。それを毎日行いました。蒸気で曇らないように天井が高くなっています。」とのことです。
見上げると、本当に天井が高い!柱や梁は、硬くて丈夫な欅(ケヤキ)や松の木が使われています。
『楽々鶴(ささづる)』とはどんなお酒?
このお酒の名前には、様々な由来があります。
まず、この出石酒造から約20kmのところにある「城崎温泉」の近くに『楽々浦(ささうら)』という地名があります。そして出石城のお殿様、仙谷公の別荘の名前が『楽々園(らくらくえん)』。また、お酒のことを『楽々(ささ)』と呼ぶので、これをかけて『楽々鶴(ささづる)』となったそうです。『鶴』はこの地域に生息していたコウノトリのことだとか。ではその、お味のほどは・・・?
- 楽々鶴「純米」
辛口だがなめらかで丸みがある
冷やすと飲みやすい常温やぬるめの燗も、味の奥行きがでて美味
- 楽々鶴「上撰」
常温・冷や・ぬる燗・熱燗なんでもOK やや辛口
ほどほどに飲みやすく味わいがある定番 - 楽々鶴「原酒」
アルコール度数19.3度 やや辛口
ガツンと力強い 冷やすか氷を入れてロックで!
「どうもみんな座学的に考えちゃうけれど、その必要はない。それよりも空間を気持ちよくするとか、もっとエンタメ的に飲む方が、豊かな時間を過ごせると思う」と中易社長。日本酒は和食だけでなく、イタリアンやフレンチなど色々な食とのマッチングも楽しめます。「なんだったら餃子とか焼肉と一緒に日本酒やってもらえたらうれしい(笑)」とのことでした。食の楽しみ方、お酒の楽しみ方が広がりますね。
実は「あまさけ」は、夏の季語!
出石酒造では、日本酒のほかに「あまさけ」や「酒粕」もお買い求めいただけます。
ご存知ですか?甘酒は冬のお酒だと思われがちですが、実は夏の季語なのです。ブドウ糖とアミノ酸が豊富なので『飲む点滴』と言われているのだとか。夏場はスッキリと、炭酸1・あまさけ2でいただくのがオススメです。スムーズで飽きないお味です。
また「酒粕」も様々に楽しめます。関東では『豚汁』ですが、関西では『粕汁』が定番。具は鮭や豚肉など脂身が合います。お味噌と酒粕の配分はお好みで!酒粕はカレーに入れてもコクが出ますし、お鍋に入れて味変も。風味がよくなって楽しめますよ♪(※酒粕の販売は、11月中旬~3月下旬ごろまで)
歴史ある城下町の酒蔵の雰囲気を堪能、そしてお酒の様々な楽しみ方を知るショートトリップ。
是非、『楽々鶴』の暖簾をくぐってみてください!