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赤ちゃんも運べそう!?翼を広げたダイナミックな姿【コウノトリ】

羽を広げた全長は約2メートル。頭上を飛んでいくと思わず身をすくめてしまうほど大きく迫力を感じます。
「赤ちゃんを運んでくる」という伝説は、私たちが普段目にするコウノトリではなく、ヨーロッパのシュバシコウというコウノトリにまつわるものですが、悠然と舞う姿を見ていると、何かステキなものを運んでくれそうな気も……?

クラッタリングをするコウノトリ

ツルといっしょにしないで

白い体でツルやサギに似ていますが、風切羽とくちばしは黒く、目の周りとくちばしの付け根、足が赤いのが特徴。

弥生時代の田んぼの遺跡から足跡が発見されており、古くから日本人にとって身近な存在だったようです。城崎温泉の外湯「鴻の湯(こうのゆ)」は、1400年前にコウノトリが傷を癒していたことから発見されたという伝説が残っています。

ただ、かつては“ツル”とひとくくりにされていたよう……。

花札や掛け軸など、松とセットで描かれることが多いツルですが、実は枝に止まることはできません。木の上に巣を作るコウノトリと混同したのだろうと考えられています。

また、昔話「ツルの恩返し」が実はコウノトリだったのではという説があります。コウノトリは成長すると鳴くことができません。かわりにカタカタとくちばしを打ち鳴らすクラッタリングと呼ばれる方法でコミュケーションをとります。この音が機(はた)織りの音に似ているのだとか。

繁殖期にはクラッタリングの音が豊岡盆地に響き渡ります。

船越さんは勤続30年を越えるベテラン飼育員

飼育員さんに聞くコウノトリの姿

コウノトリといえば、物語の中ではよく幸せの象徴として登場します。ニュースなどでもオスとメスが協力して子育てをする姿が紹介されたり、なんだか微笑ましいですが、実際のところどんな鳥なんでしょう。

兵庫県立コウノトリの郷公園で主任飼育員を務める船越さんに、その生態について教えてもらいました。

給餌の様子(兵庫県立コウノトリの郷公園提供)
人工巣塔で子育てをするコウノトリのペア

親鳥よりも食べるんです

「肉食のコウノトリは野外でカエルやヘビ、ドジョウやフナを捕食しています。コウノトリの郷公園ではアジやニジマス、ドジョウを1日に約500〜600g与えていますが、これは体重の1割ほどもあるんです。さらにヒナは成鳥よりも食欲旺盛。生後1ヶ月で1日に約1kgの餌を平らげ、その1ヶ月後には、親鳥と変わらないほどの大きさになります」と船越さん。

すさまじい食べっぷり。巣ではヒナが餌をねだってピイピイ鳴き、親鳥はこの餌乞い(えごい)に反応して餌を吐き戻して与えるそうです。

コウノトリが鳴くのはヒナの頃だけ。船越さんも「ヒナのかわいさは格別」と話す通り、その姿に癒される人は少なくありません。

コウノトリの卵は鳥の中では珍しい白色。「巣を襲う外敵がいない頂点捕食者ゆえでは」と船越さん (兵庫県立コウノトリの郷公園提供)

真のおしどり夫婦?

仲の良い夫婦を“おしどり夫婦”と言いますが、実はオシドリは毎年ペアを変え、抱卵も子育てもメスだけで行います。一方コウノトリは、一旦ペアになるとほぼ一生添い遂げ、オスとメスが交替で卵をあたため、子育ても協力して行うそう。まさに夫婦の鏡!

ただ、船越さんいわく「ペアにするのが難しい鳥」。オスは気性が激しく、同じケージに入れたメスが気に入らないと鋭いくちばしで攻撃するのだそうです。メスも怯えてペアに至ることは少ないのだとか。

「コウノトリがなかなか増えなかった大きな理由のひとつです」と教えてもらいました。

熱しにくく冷めにくい、人間なら硬派で好感度大……?

でも手(くちばし)を出したらダメ!

 

コウノトリにもしっかり好みや個性を感じてなんだかグッと親近感がわきました。

船越さん、ありがとうございました。

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