自然を満喫する

心とカラダのプチリセットに最適【清竜の滝】

豊岡市但東町西谷にある「青竜の滝(瀧)」は、県立自然公園東床尾山東麓に位置する落差20mの滝です。駐車場から滝までは簡単にアクセスできますので、最近自然に触れていないと思っている方、ストレス過多の方は、心とカラダをプチリセットするのにいかがでしょうか?春の桜、夏の新緑、秋の紅葉の時期など気候のよい時期が特におすすめです。

「清流」じゃなくて「青竜」?

清らかな水が流れる滝は「清流の滝」と名付けられがちですが、こちらの滝は「清い流」ではなく「青い竜」。なにやら伝説のにおいがします。

但東町には多くの民話が残っているので「但東の民話と伝説」(豊岡市教育委員会)で調べてみました。民話によると、むかしから西谷村の滝には竜が住んでいると言われていました。村が大干ばつに見舞われたある年、竜神様を祀った祠がある滝で、お坊さんや村人が雨乞いの祈祷をしたところ、風が巻き起こり、滝の奥の谷から黒い雲が現れるとみるみる空を覆い、目を射る電光が走ったかと思うと、山を引き裂くような雷鳴がとどろき、大雨が降り始めました。その時、「青い竜」が雨雲の中を波を打つように飛んで妙見山堂の方に消えていきました。それは一瞬のできごとでした。西谷の滝には、やはり竜が住んでいたのです。水の流れも清らかな滝なので村人は「青竜の瀧」と呼ぶようになり、「村を救ってくれた竜神様を粗末にすると罰があたる」と、なおいっそう崇め祀ったといわれています。民話にも残っている通り、“青い竜が住む瀧”なのですね。

駐車場から徒歩3分で別世界!

民家が途切れた、車が一台通れる程度の山沿いの小径を進むと、急に視界が開け、駐車場とトイレや東屋(あずまや)が見えてきます。そして、左手にちょこんと「清竜の滝」の看板が。本当にこんなところに滝があるのでしょうか?大きな杉の木の林で視界が遮られ、なにも見えませんし、水の音すら聞こえません…。
看板に従い、緩やかな坂を下ると遊歩道が続いています。清らかな水が流れる渓流、苔むした川沿いの石垣、鉄製の赤い橋が架かり、その先には滝が!徒歩2~3分で滝、まさに“駅近”ならぬ“滝近”です!

生まれたての空気が全身を巡る

目の前に広がる「青竜の滝(瀧)」は、滑らかな一枚の岩肌を真っ白な滝が流れ落ち、とても繊細で可憐な滝です。滝の下手には小段の落差がいくつかあり、岩肌を水が滑り流れていくのも良い風情を醸し出しています。
滝に近寄れば近寄るほど、明らかに“凛とした透明な空気”になっていくのを感じます。これは“生まれたての空気”と言っても過言ではない、ピュアな空気が気道や肺、そして身体中に浸み込んでいくのを実感します。そして、どんどん感覚が研ぎ澄まされ、いつまででも深呼吸を繰り返して、この空気を身体中に巡らせ、全身を浄化したくなります。

西谷地区観音堂

なぜ、こんな山奥に「十一面観音菩薩立像」が?!

滝の近くには「兵庫県指定文化財 木造十一面観音菩薩立像」と書かれた看板があります。趣がある観音堂の奥には、平安時代前期末に、かの有名な仏教僧である行基が彫ったとされるカヤの一木造の154㎝もの観音様が!

“異形であるがゆえに個性的で魅力的である”と『続 古佛』(井上 正 )や『地方仏を歩く 第一巻 近畿編』(丸山 尚一 )で取り上げられています。

扉を開けて観音様と対面すると、その場の空気が一変します。本当に神域があるのならば、ここがそうなのでしょうか。目に異様な力があり凄みがあります。とても威圧的です。後世の修理の際に使用されたという真鍮粉の酸化による青い体の色も手伝って、畏れおののき、思わず「申し訳ございません」と謝ってしまいそうになります。

凄みのあるお顔に反し、左手に持ったピンクの花の水瓶がかわいいですし、絹の天衣の形がおしゃれなので、いわゆるツンデレ系の仏像だと思えば、畏れも激減し、愛おしさすら覚えます。

西谷地区の山の霧

平家の郷

但東町西谷地区は、山を越えれば京都府ですので、平家の落人が隠遁した地区とも言われています。藤原姓が多いのも、その信ぴょう性を高めます。都人がかつて暮らした京に思いを馳せて仏像を崇めていたのかもしれません。京の方向の山にたなびく霧や雲の竜に希望を込めたのかもしれません。

今でも、西谷地区から滝のある方の山を眺めると、山から天に上る霧やたなびく雲が、まるで「竜」のように見えます。昔の村人たちが、“この村には竜が住んでいる”と想ったことに納得できる、幻想的な光景が目の前に広がっています。

時空を超えて、いにしえの時に思いを馳せるにはぴったりの場所かもしれませんね。

「自然を満喫する」スポットの楽しみ方

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