大生部兵主神社の神楽殿(豊岡市但東町薬王寺)
「天王さん」と呼ばれ、牛馬の神様を祀る神社として古くから人々に親しまれている神社です。境内には樹齢400年と推定されるご神木の杉の木があります。
神楽殿では今でも毎年5月に豊作を祈願する春の大祭が行われ、神楽「浦安の舞」が奉納されています。正面が拝殿や本殿の方を向いており、歌舞伎舞台に比べ観客席がわずかしかありませんが、神楽殿と拝殿の近さから神に捧げるための舞台なのだとわかります。
安牟加神社の舞台(豊岡市但東町虫生)
県の有形民俗文化財に指定されており、現在も「ささばやし(太鼓踊り)」の舞台として使用されています。構造は壁から梁を出すと言うセガイ造。舞台を前方に緩やかに傾斜させた「撥(ばち)転がし」や、遠見をはめ込むために舞台背面が天地に割れてその間に襖をはめ込むようにした「遠見(とおみ)機構」や「上段舞台」など、奥行きがあるようにみせる工夫が施されています。舞台の上手奥に物置小屋が設置されているのも見どころです。舞台内部の落書きから「文久2年(1862)」の年代が確認できます。
日出神社の舞台(豊岡市但東町畑山)
畑山集落のほぼ中央部にある日出神社。室町時代末期に建てられたという本殿は国指定重要文化財となっています。火災に見舞われたことがありますが、なるべく古材を使って修復されたそうです。芝居の際には背面の両端部が開口となり、楽屋への出入りとして使用されていました。左手には花道、右手には太夫座が置かれていたのでしょう。内部には大きな上段舞台が造り付けられてあります。ここでも「撥(ばち)転がし」手法が平舞台にも上段舞台にも用いられており、それぞれ1度と2度ずつ前方へ傾いています。
一宮神社の舞台(豊岡市但東町久畑)
かつての京街道、久畑の関所近くにある一宮神社。ここには県指定天然記念物となっている「一宮神社のケヤキの森」があります。境内にある舞台の背面には1.8mほどの柱が並んでおり、芝居の際には楽屋として使うことができました。派手な虹梁の文様と移動式の上段舞台が残されているのが特徴です。
岡神社の舞台(豊岡市但東町唐川)
出石川沿いの国道482号線から少し登ったところに位置します。観客席を広く取る工夫がなされている岡神社の舞台。歌舞伎を行わなくなってから改造されており、外壁も内壁も新しいトタンや内装材が貼られています。床高が他の舞台と比べて高く造られているのが特徴です。
赤野神社の舞台(豊岡市但東町赤野)
集落の中央部から一段奥の小高い丘の上にある赤野神社。舞台は前面に板床が敷かれており、その奥には遠見(舞台背景の内、遠景を描いたもの)をはめ込むための大きな窓枠が取られています。床が全面に渡って前方に傾斜した「撥(ばち)転がし」と呼ばれる工法が見られます。これは能舞台によく見られるもので、正面から観た時に演者のつま先の足運びまでがよく見えるなどの効果があるそうです。
岡神社の舞台(豊岡市但東町三原)
梁間が5つに分かれており、第一間を広く取って、奥へ進むに連れて狭い柱間となっています。解放されている左右の第一間は、花道や太夫座として使っていたのでしょう。正面奥には借景と呼ばれる施設が用意されており、それに取り付くような形で常設の上段舞台が、幅は狭いながらも造りつけてあります。虹梁(こうりょう)には若葉と渦巻の彫刻が彫られています。
下村神社の舞台(豊岡市但東町東里)
舞台の形状が長手の長方形になっているのが特徴です。歌舞伎が行わなくなってから子どもたちの遊び場や集会所となり、床板の全面部分が取り払われてコンクリート打ちになり、中央部に囲炉裏が造られています。外壁はトタンで覆われていますがこのような形でもなんとか残されていることは貴重なことなのだそうです。
他にも下記のようにたくさんの歌舞伎舞台が残っています。
- 山口神社の舞台(豊岡市但東町坂津)
- 三柱神社の舞台(豊岡市但東町畑)
- 相田の倉庫(舞台)(豊岡市但東町相田)
- 佐々伎神社の舞台(豊岡市但東町佐々木)
- 春日神社の舞台(豊岡市但東町平田)
- 日足神社の舞台(豊岡市但東町栗尾)
- 二宮神社の舞台(豊岡市但東町後)
- 新宮神社の舞台(豊岡市但東町東中)
- 村岡神社の舞台(豊岡市但東町久谷)
- 熊野神社の舞台(豊岡市但東町大河内)
近年まで残っていましたが、今はなくなってしまっている舞台もあります。
- 水石公会堂(観音堂)の舞台 (豊岡市但東町水石)
- 権現神社の舞台(豊岡市但東町正法寺)
秋に開催される『豊岡演劇祭』などでも使用され、再度その存在に注目が集まっています。演劇のまち豊岡の原点を感じる旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。
*この記事は2001年発行された「但東の農村歌舞伎舞台(但東町教育委員会)」を参考に作成しています。現在は状態が変わっている箇所もあります。掲載している写真は最新のものです。(2023年3月)