歴史文化を感じる

『まんが日本昔ばなし』ゆかりの【鼻かけ地蔵】

円山川を挟んだ城崎温泉のちょうど対岸に「楽々浦湾(ささうらわん)」という大きな入江があります。そのほとりの小さな祠に祀られているのが「鼻かけ地蔵」。その名の通り鼻がかけた不思議な顔のお地蔵様で、地域の人からの信仰を集めています。

昔ばなし「鼻かけ地蔵」のおはなし

民話「鼻かけ地蔵」は、1980年にテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』で紹介され、全国的に知られています。

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むかし、兵庫県城崎の円山川のほとり、楽々浦に住む貧しい漁師“喜助”の夢まくらにお地蔵様が現れ、こう言いました。

「ある年の大水で川底にさらわれた。ここは冷たくて暗いから、助けておくれ」

翌朝、漁師が川の中程で漁をしてみると、一回で一日分ほどの魚が取れたのでした。夢中になって漁をしていると、夢で見たお地蔵様が網にかかりました。

喜助は、大漁もお地蔵様のおかげに違いないと陸にあげて丁寧に祀りました。

すると、お地蔵様の鼻から米粒がポロポロ落ちてきたのです。

どんどん出てくる米粒のおかげで、喜助はたちまち裕福になりました。

お金持ちになるに従って欲が深くなった喜助は、お金儲けのことばかりを考えるようになっていきました。

「鼻の穴を大きくしたらもっと出るのでは」

と、お地蔵様の鼻の穴を広げようとノミを打ち込んだ拍子に鼻がそげ、米は二度と出なくなりました。

喜助は、反省して毎日地蔵にお参りをし「心豊かに生きられますように」と祈り続けました。

再び舟に乗って網を打つ生活に戻った喜助は、やがて、嫁をもらい貧しいながらも幸せに暮らしたそうです。

(城崎温泉観光協会ホームページより引用)

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この話の通り「鼻かけ地蔵」は「一願成就」のお地蔵様とされ「欲を出さずにひとつだけお願いごとをすると、お地蔵様が叶えてくれる」と今も言い伝えられています。
実際に叶った人の話も数多くあり、城崎の町の人だけでなく但馬地域や峠を越えて丹後地方からも祈願に訪れる人、そしてお礼参りに訪れる人が絶えません。
境内はいつも掃き清められ、祠に季節の花が供えられている様子から地元の人がこの場所をとても大切にしていることがうかがえます。

また、毎年、6月の第一日曜日には例祭「鼻かけ地蔵尊祭」が開催されます。お地蔵様を囲んで御詠歌や護摩供養、紙芝居などさまざまな催しが行われる地域の大切なお祭りは、老若男女多くの人が近隣のみならず遠方からも集まります。

楽々浦で信仰されるもうひとつの神様。

「鼻かけ地蔵」が祀られる祠が望み、物語の中で喜助がお地蔵様を引き揚げた楽々浦湾は、円山川の運んだ砂や泥でせき止められできたもので、野生の動植物が数多く生息しています。
湾に突き出た小島はどんな大洪水でも浸水せず、水上に浮かんでいるように見えることから「浮島」と呼ばれ、いつしか水を治める守り神として弁財天が祀られるようになりました。

昭和57年(1982)には社殿が再建され、海上に鳥居を新設。安芸(広島)の厳島神社からの分霊を迎え「厳島神社 楽々宮」が建立され、今の風景が作られました。
地元の人には「浮島弁天」「浮弁天」と親しまれ、「鼻かけ地蔵」と一緒に参拝する人も多く、また、鳥居が浮かぶ楽々浦湾の風景は早朝や夕暮れ時に神秘的な写真が撮れると、人気のフォトスポットになっています。

城崎温泉からは自転車で約15分ほど。雄大な円山川の風景を楽しみながら、とっておきの願いごとを胸に「鼻かけ地蔵」に会いに行ってみては。

「歴史文化を感じる」スポットの楽しみ方

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