自然を満喫する

160万年かけて自然が作り出す大彫刻【玄武洞公園】

そのはじまりは160万年前。玄武洞は、近くにある二見山の噴火により流れ出した溶岩が冷えて固まる時にできた岩石層で、海や川の波に削られて約6000年前に柱状の岩壁が姿を現しました。その後、採石場として石が採取されたため現在の「洞」の風景になっています。

不思議な「自然の彫刻」を間近で観察

玄武洞は城崎温泉から車で約10分の距離にあり、山陰海岸ユネスコ世界ジオパークの主要な自然遺産で、国の天然記念物に指定されています。「玄武洞」と「青龍洞」、そして「白虎洞」「南朱雀洞」「北朱雀洞」の5つの洞が「玄武洞公園」として整備されており、玄武洞の魅力は美しい「柱状節理」にあります。物質は温度が高くなると膨張し、温度が低くなると収縮する性質を持ちますが、火山の噴火により流れ出した溶岩が地表付近で冷され、収縮するときにできる割れ目を「節理」と呼びます。「節理」が柱状になっているものが「柱状節理」で、玄武洞の節理は縦方向だけでなく横方向へも発達。曲線を描きながら放射状に広がって作り出される独特の美しい風景は、「自然の彫刻」「神様の彫刻」と例えられます。特に「白虎洞」では横方向に発達する柱状節理とその断面も間近に見ることができるので、六角形の断面や玄武岩が積み重なった様子をじっくり観察しましょう。

柱状節理とともに愛でる四季折々の美しい自然

円山川を見下ろす山の中腹の山肌の一部から玄武洞は露出しているため、春は眩しい新緑、秋には燃えるような紅葉、そして冬には幻想的な雪景色を美しい柱状節理とともに眺めることができます。例えば春はコブシやサクラ、夏はアジサイやツツジ、秋はイロハモミジ、冬はツバキと順番に散策路で見事な花を咲かせ、四季折々に豊かな自然を愛でることができるのも玄武洞公園の魅力です。また、玄武洞を背にして振り返ると豊岡盆地、ラムサール条約に登録されたコウノトリの舞い降りる水田や湿地を望むことができます。ダイナミックな玄武洞はもちろん、雄大な豊岡の自然も感じてみてください。

地質学分野の世界的発見が玄武洞に

実は、地質学分野において世界的に重要な発見が玄武洞でなされています。地球の長い歴史において、地磁気のS極とN極が入れ替わる「地磁気の逆転」が繰り返し起きていますが、大正15年(1926)に京都帝国大学の松山基範博士が玄武洞の岩石の持つ磁気が、現在の地磁気と逆転していることを発見し、昭和4年(1929)玄武洞の玄武岩が出来たときの地磁気の向きが現在とは反対だったという説を発表しました。当時は地磁気の成因自体が全くの謎であったため、この地磁気逆転の考えが科学者たちの注目を集めることはありませんでしたが、その後広く認められて現在では258万年前から77万4千年前までの地磁気が現在と反対向きであった時期を「松山期(松山逆磁極期)」と呼び、地磁気の逆転の存在は定説になっています。

この磁気の逆転とともに、玄武岩には磁鉄鉱という鉱物が含まれ強い磁性を持つ天然の磁石になっている場合もあるため、玄武岩の上で方位磁石を動かすと針がグルグル向きを変えるかもしれません。玄武洞を訪ねたときにぜひ試してみてください。きっと地磁気の不思議をより体感できるはずです。

ハイキング気分で公園を隅から隅まで散策

玄武洞公園内の散策路はやや勾配があるため、隅から隅まで歩くと季節によってはじんわりと汗ばみ、ちょっとしたハイキング気分を楽しめます。玄武岩を敷き詰めた階段はデコボコしている部分もあるため歩く際には足下に少し注意が必要ですが、160万年前に溶岩が冷え固まるときに刻まれた外側から中心に向かって放射状に線が延びる玄武岩の模様を間近に見て、触れることも可能。見て、触れて、感じて、160万年の地球の歴史に想いを馳せながら、玄武洞の圧倒的な自然美を堪能してください。

 

 

ユネスコ世界ジオパークとは?

国際的に重要な地球科学的意義を持つ場所や景観が、保護、教育、持続可能な発展という 全体的な概念に基づいて管理されている、単一の統一された地理的エリアです。

玄武洞公園は、ユネスコ世界ジオパークの地質遺産です。世界で初めて地磁気逆転が発見され、地球科学の発展に大きく貢献したことを称え、玄武洞はIUGS(国際地質科学連合)世界地質遺産100選に選ばれました。

 

 

「自然を満喫する」スポットの楽しみ方

玄武洞公園「歴史文化を感じる」楽しみ方

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