歴史文化を感じる

海とともに暮らす集落を見守る神様【田久日弁財天社】

豊岡市北部の日本海沿岸の狭小な谷にある集落、豊岡市竹野町田久日(たくひ)。
海水浴で人気の「竹野浜」から東へ進んでいくとこの地区にたどり着きます。
田久日の小さな漁港の切り立った崖沿いに張り付くようにある「田久日弁財天社」は、地域の歴史・生活文化、自然のパワーを感じられるスポットです。

田久日の弁天さん

「田久日弁財天社」は地元の方から“弁天さん”と呼ばれ親しまれています。
この弁天さんは大漁を祈願する神様として信仰されており、ここに暮らす人達が毎日手を合わせて、お祈りをされる姿を目にします。
地域を見守るように海を背負って建てられた弁天さんには、クジラの骨も祀られており、海とともに暮らす集落であることを実感します。

平家伝承の隠れ里

田久日のある日本海沿岸は、リアス式海岸の入り組んだ海岸線が続きます。狭小な谷に沿って家々が立ち並び、集落を形成する姿は、まさに陸の孤島のようです。

全国各地には平家の隠れ里の伝承がいくつもありますが、田久日にもその伝承が残っています。昭和30年代まで陸伝いに田久日集落へ行くには、獣道のような細い道しかありませんでした。集落の海岸沿いには「舟隠し」と呼ばれる場所があり、陸から船が見えない地形で船を係留することが可能でした。このような地形の特性があったからこそ、かつて平家が身を隠していたのかもしれません。
田久日地区中央部にある観音堂の傍らに石の塔があり、中には平盛嗣(たいらのもりつぐ)こと「越中次郎兵衛盛継」と藤原 景清(ふじわらのかげきよ)こと「悪七兵衛景清」の名がかかれた供養塔があります。いずれも源平合戦で活躍し、壇ノ浦の戦いで敗れて落人になったと伝説が残る人物です。

日本海の波風の激しさを物語るもの

海に面した田久日の集落には、天気が荒れると激しい風雨や波が押し寄せます。その気象の激しさを弁天さんの鳥居に見ることができます。

海に面した鳥居の裏側を見てみると、潮風や波で浸食し、多数の穴が開いている(タフォニと呼ばれる風化現象)ことが分かります。

この鳥居は、明治40年(1907)に建てられたものなので、115年かけてここまで浸食が進んだのだと自然の力を感じさせてくれます。

またこの辺りの地域では激しい気象に対応するため、集落の家の外壁には焼杉板が貼られ、屋根の上には棟石が置かれるなど、この地に生きる工夫と技術に触れることができます。

田久日の岩海苔

田久日ではリアス式海岸の恵みとして様々な海藻類を採ることができます。冬の強い北西からの風によって岩場に波が打ち寄せられ、岩場には天然の岩海苔が育ちます。この季節には、岩海苔摘みの光景が海岸一帯で見られます。
摘み採られた岩海苔は、人の手で丁寧に石を取り除き、巻きすだれに伸ばし、天日干しして、市場に出荷します。磯の香りが強く残る岩海苔は地元でも中々出回らない貴重品で、特に田久日の岩海苔は美味しいと言われています。

「歴史文化を感じる」スポットの楽しみ方

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