歴史文化を感じる

地域に愛されたハチゴロウ、ハチゴロウが愛した湿地【ハチゴロウの戸島湿地】

JR城崎温泉駅から徒歩20分、自転車で7分(1.6km)にある「ハチゴロウの戸島(としま)湿地」。人と生きものの暮らしや自然の大切さを感じるおすすめスポットです。

「ハチゴロウ」って?

ハチゴロウは人ではありません。みんなに愛された一羽のコウノトリです。
コウノトリはかつて日本全国の大空を舞っていました。木々の伐採、農薬散布等でコウノトリが暮らしにくい環境となり、1971年に豊岡で最後の野生のコウノトリが保護され、とうとう日本の空からコウノトリは姿を消してしまいました。
「コウノトリを再び空へ」と、1955年から豊岡では様々な取り組みが行われてきました(2005年に野外への試験放鳥スタート)。そのような中、2002年8月5日に野生のコウノトリが大陸から飛来し舞い降りました!初めて野生のコウノトリを見た人々はその優雅な姿に魅せられ、大切に見守りました。飛来した日にちなみ「ハチゴロウ」と名付けられました。
そんなハチゴロウが毎朝、決まった場所へ出かけるようになりました。それが「戸島(としま)」の田んぼです。ひとつの場所にこだわらなかったハチゴロウがこれほど気に入るとは・・・。この戸島の田んぼにどのような魅力があったのでしょうか?

ハチゴロウの戸島湿地ができるまで

豊岡市の中心を流れる円山川(まるやまがわ)の河口から約3.5km遡ったところに、戸島地区があります。戦後、豊岡市全体の農業近代化の中で耕地整理が進みましたが、この戸島地区だけが湿田のまま残っていました。ようやく2003年に嵩上げ(かさあげ)工事が始まり、残り約6ヘクタールを残すのみとなった2004年10月、台風23号によって豊岡市のほとんどが水浸しになってしまいました。当然戸島地区の耕地整理工事は中断しました。中断したことにより、放置された田んぼはいつしか自然の湿地になり、濁流と一緒に入り込んだ魚たちが泳ぎ回っていたのです!

この状況をハチゴロウが見逃すわけがありません!毎日訪れ採食に励みます。コウノトリは大食漢で餌となる生きものがたくさんいる場所を好みます。大きなナマズをペロリとたいらげる野生の荒々しさと、人懐こいまなざしを向ける愛嬌が同居して、ハチゴロウはみんなの人気者になりました。

「こんな素晴らしい場所は後世に残すべき」、「このまま湿地の状態にしておけないか?」と声が上がり始めました。そこで、豊岡市と農家の人たちとで何度も話し合いが持たれました。「コウノトリが来たことで村に活気が出てきた」、「コウノトリのための湿地になると周囲の田んぼは農薬が使えず、大変になるのでは・・・」など、様々な意見が出てきます。
すると当時の豊岡市長から「コウノトリが舞い降りる豊かな湿地があることで農産物のブランド化など、村全体の価値が上がるのではないか。コウノトリと湿地を活用して地域の活性化を目指しては?」と提案が。
話し合いの結果、6ヘクタールの土地のうち、半分を湿地として市が買い上げ、残り半分を田んぼにすることになり、2009年4月に「豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地」が完成しました。生態系をより豊かにするため、湿地を単独で考えるのではなく、海や山、川、田んぼ、水路や、湿地と繋げ、多様な生きものが行き来できるように管理をしています。湿地はまるで生きもののデパートのようです。施設の管理運営は、コウノトリのことが大好きなメンバーが集まった市民グループ(コウノトリ湿地ネット)で行っています。

ハチゴロウが教えてくれたこと

湿地の完成を見ることなく、2007年2月にハチゴロウは亡くなってしまいました。亡くなった原因はわからずじまいです。突然の死に多くの人が悲しみ、彼の記憶を風化させないために、この湿地にハチゴロウの名前を付けました。
ハチゴロウは色々なことを教えてくれました。例えば「生き物が好む場所」や「田植え後の稲をコウノトリがどれくらい踏むのか」など。

ハチゴロウの動きを調査した結果、410歩に1株の割合で踏むことがわかり、その程度ならお米の収穫量には影響がない!と判断できました。

生き物と人は共生できるのです。生き物によって人は豊かに生きられるのです。
ハチゴロウは命と自然の輝きを教えてくれました。この湿地を眺めているとそんな感動が胸に沸き起こります。

湿地のおすすめの楽しみ方

コウノトリ湿地ネット 事務局の森 薫(もり かおる)さん(左)と、永瀬 倖大(ながせ こうた)さん(右)

まずは、管理・運営されているコウノトリ湿地ネットの方とのおしゃべりからスタート!
「コウノトリ見えますか?」、「どこを歩いたら良いですか?」と尋ねてみてください。管理棟の望遠鏡で、どのあたりにコウノトリがいるかなど、気さくに色々と教えていただけます。

続いて外を歩いてみましょう!

静まった湿地をよく観察してみると、たくさんの生きものがいます。観察小屋から身を隠してコウノトリを眺めたり、湿地を眺めながらたたずんでいると、自分も自然の一部なのだな、と体感できます。ゆっくり自然を堪能すると心も体もとても癒されます。

雪が止んだあとは、日の光がキラキラと雪や氷に反射してとてもきれいです。
「雪の上はマイナスイオンがいっぱい」と森さん。本当に気持ちがよくて心まで浄化されるようです。

『おかえりコウノトリ』の著者であり、コウノトリ湿地ネット の代表でもおられる佐竹節夫(さたけせつお )さん

「ふたつのコウノトリの巣が見られるのはここならではです」と佐竹さん。
大空を優雅に舞うコウノトリ、その向こうには、列車「こうのとり号」が走っているのが見えます。

鳥たちの羽ばたく音、風の音、木々の音、遠くに列車の音・・・とても静かで平和な時が流れています。

 

「春にはたくさんの生きものが繁殖期を迎えて、魚も元気に水辺を飛び跳ねるのが見られますよ。老夫婦が二人で手をつないで静かに歩いていたりするのも、良い光景だなと思う」
「コウノトリが暮らせる環境づくりに貢献したい!という方は、草刈りなどへの参加、大歓迎です」
とのことでした。管理棟では様々なお話を伺うことができます。

環境づくり、湿地づくりの歴史文化を学ぶには、もってこいのハチゴロウの戸島湿地。ぜひ一度訪れてみてください。

「歴史文化を感じる」スポットの楽しみ方

ハチゴロウの戸島湿地「自然を満喫する」楽しみ方

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