関西屈指の温泉街である城崎温泉で今も継承されている伝統工芸「麦わら細工」。兵庫県伝統的工芸品・豊岡市無形文化財に指定されています。
城崎温泉街にある「かみや民藝店」の田口さんに協力して頂き、麦わら細工の製作工程などを紹介します。
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兵庫県北部、日本海に面した豊岡市にある城崎温泉は、カニや温泉で有名な観光の街です。
「城崎麦わら細工(英名:Straw craft)」はこの街で受け継がれる伝統工芸で、染色した麦わらを張った桐箱や色紙、箸置き、ペンダントなど様々な作品があります。
開湯1300年を迎えた城崎温泉で麦わら細工が作られるようになったのは、今から約300年前、江戸時代のことです。
因州(鳥取県)の半七という人が、城崎に病気を癒やすために訪れ、竹笛や独楽などに色とりどりの麦わらを張り、宿の店先で売り、宿費の足しにしたのが始まりと伝えられています。
「私は麦わら細工の最大の魅力は『麦本来の持つ艶と輝き』だと思っています」と話すのは、かみや民藝店で修行中の田口さん。
「麦は縦に繊維が通っているので、向きを変えて張ることでその特徴が表れます。模様によって麦の特徴を活かした張り方をするのがとても難しいです。
私が初めて麦わら細工を見たのは、城崎温泉に旅行で来たときに宿泊した旅館に掛けてあった、鶴の壁掛けです。
最初は『きれいな絵だなぁ』と思って見ていただけで、それが麦わらでできていると聞いたのですが、正直すぐにはピンときませんでした。その後、伝承館で作り方を知って、驚いたのを覚えています」
かみや民藝店の神谷俊彰さんと田口幸子さん
まずはなんといっても原料となる麦わらの調達です。
農家さんに頼んで作ってもらう分もありますが、昨年からは自分たちでも畑に種を蒔くところから作っています。
10月下旬に種を植え、雑草をとり、穂が伸びてきたら、ネットを上げて穂が倒れないようにしてあげます。
今年の10月下旬に植えた種が順調に育っている様子
麦の茎が青から茶色へと色付いてきたら、ひとつひとつ手作業で刈り取りをしていきます。
刈り取ったら、虫がついたりしないように硫黄で燻蒸し、その後ビニールハウスで二週間ほど乾燥させます。
次に、麦の節を切り、節ごとに束ねます。
それから、重曹を入れた湯で煮る湯煮という作業を行い、その後化学染料で染めていきます。
これでやっと麦わらの準備ができて、ここから箱や色紙などに張っていきます。
麦わら細工は模様張りと小筋張りの二つに分けられます。
模様張りは、まず、下地となる麦を張ります。
花や鳥、人物画を写し取り、はめ込みたい色の麦を仮つけして、鉄筆でなぞり、あとをつけます。
次に、切り出しでなぞった線を切り込んでいきます。
切ったら一旦はめ込むパーツも、下地の麦も取り除きます。
そこに、はめ込むパーツに薄くのりをつけ、張ります。このとき、麦に艶があり、重ねて張ることができないため、このように象嵌という技法を用います。
小筋張りは、まず麦わらを開き、細い筋状にします。
それを必要な本数手にとり、色を組み合わせ、のりをつけて縞柄の筋を作ります。
そして作った縞柄の筋を組み合わせて、籠組や亀甲張りなど、幾何学模様に張っていきます。
色を組み合わせて、筋状にします。
同じ色でも、張る方向を変えることで、見え方がかわります。
かみや民藝店では商品の販売だけでなく、麦わら細工の体験をすることもできます。
ふらっと、リトリートTOYOOKAで販売している城崎温泉街歩きパス「キノパ」には、麦わらを使ったオリジナルしおりづくりが含まれています。ぜひご利用ください。
現在(2021年11月25日~2022年1月25日)、城崎文芸館で神谷勝さんの個展を開催しております。
こちらにもぜひお立ち寄りください。