■ライタープロフィール
まつもとよしこ
旅モノ雑誌の編集・ライター歴20年。 地域おこし協力隊として2016年に城崎町へ移住し、今は温泉街のとある旅館の若女将とライターの二足の草鞋を履いて暮らしています。城崎温泉の「湯のある暮らし」がとっても気に入っていてお風呂は毎日外湯派。食べること、健やかな暮らしに興味があり、山陰地方(主に島根県)のうつわを中心とした手仕事の品をこよなく愛しています。
目次
私はふだん嫁ぎ先の「旅館」を手伝っていますが、最近では「泊食分離」のスタイルが人気で旅館での食事を付けず「素泊まり」で予約する人や、温泉街にも「素泊まり専門」の宿が増えています。
お客様から朝食のお店を聞かれる機会も増えましたが、何より私自身が「喫茶店モーニング」大好き。旅館の仕事は朝食の準備があるため早起き必須&とにかく早朝からバタバタしてしまいがちで、お客様の朝食中に、私も旅館の厨房の片隅で立ったままこっそりと卵かけご飯をわしわしとかきこむような毎日・・・(涙)
ゆえに、お休みの日の朝はここぞとばかりに朝寝坊をして、旦那さんと温泉街へモーニングを食べにでかけてとびきりゆったりとした朝のひとときを過ごすのが何よりの贅沢なのです。そんな私のお気に入りモーニングを今回は紹介します。【2025.4.14時点】
城崎温泉のウェルカムストリート「駅通り商店街」にある『茶房 夢屋』さん。かわいいステンドグラスの扉が目印です。
温泉街の中でもいち早く「モーニングセット」をはじめられたお店のひとつで、セットはパンとコーヒーだけでなくサラダとヨーグルトもつく充実の内容。コーヒーは豊岡で90年以上続く老舗店『蜩(ひぐらし)珈琲店』が焙煎する豆を使い、淹れたての香り高い一杯を用意してくれます。
窓際の席に座り「あの人たちはこれから電車で帰るのかな」「みんなお土産たくさん持ってるなぁ」「あ、○○さんだ」なんて、窓から通りの人の往来を眺めるのが私の楽しみの一つなのですが、城崎温泉は観光地だからか行き交う人たちがみんな楽しそうな表情で、見ていてうれしくなります。あわただしく人が行き交う都会のオフィス街にある喫茶店モーニングとはちょっと異なる風景かもしれませんね。
ちなみに、『茶房 夢屋』さんの看板メニューといえば「かにサンド」。冬は「カニ王国」を名乗る城崎温泉の喫茶店だけあって、サンドするのはカニカマではなく『本物のズワイガニ』!実はまかないから誕生したメニューなんて信じられないくらい贅沢な美味しさで、私もまだ城崎に嫁ぐ前、友人と一緒にカニ旅行を楽しんだ帰りに食べた思い出の一品です。テイクアウトもできるので、事前に注文しておいて電車に乗る前に受け取り、電車内で駅弁代わりにするのもおススメ。お店をきりもりされるご夫婦(特にご主人)は城崎周辺のいいところをたくさんご存知なので、その日の行き先がまだ決まっていないようならぜひおススメの場所を尋ねてみてください。
茶房 夢屋
●住 所:兵庫県豊岡市城崎町湯島90(MAP)
●営業時間:9:00~16:30(モーニング9:00~11:00)
●電話番号:0796-29-4015
●定 休 日:不定休
●メニュー:モーニングセット 750円
四所神社から小路に入り、木屋町通りにさしかかるとふわり漂ってくるパンの焼けるいい香りをたどった先にあるペストリー『PARADI』さん。地元産だけでなく信頼のおける生産者さんから取り寄せる素材を使い、もともとフレンチやイタリアンの料理人やパティシエとして腕を磨いたご主人が作るクロワッサンやキッシュ、パイ、焼き菓子などが、店内のキッチンから焼きあがった順に並んでいきます。
2022年10月のオープン以来すぐに城崎温泉に人気店のひとつに名を連ねるようになりましたが、その人気に驕ることなく日々進化を続けているのが『PARADI』さんのすごいところ。名物ともいえるクロワッサンはオープン当初の段階ですでにとっっっても美味しかったのですが、その後も改良に改良が重ねられ、一口食べたときのさくっとした軽やかな食感と共に濃厚なバターの香りがすぅっと鼻に抜ける瞬間の幸せ度がどんどん増しているように感じます。
また、朝食としてイートインを利用するお客様に「もっと朝食を楽しんでもらえるように」と、スープやモーニングプレートを用意するなど、訪ねるたびに何かがバージョンアップ・・・!そして昨年はヨーロッパのベーカリーに短期留学されてますます腕をあげ、地元の人をはじめ世界中から訪れる観光客を魅了しています。
お店の前の小さな橋の上には、川面を通る風を感じながら過ごせるイートインスペースも。路地裏ならではの静けさの中でゆったりと過ごす朝の時間は、とびきり贅沢です。
ちなみに私は旬の素材がぎっしり詰まったキッシュが大のお気に入り。ぜひお試しを♪
PARADI
●住 所:兵庫県豊岡市城崎町湯島538(MAP)
●営業時間:9:00~16:00
●定 休 日:木曜日
●メニュー:クロワッサン 310円、モーニングプレート 960円など
豊岡出身の建築家・垣田 博之氏が設計したスタイリッシュな建物がぱっと目をひく『UTSUROI』さん。元は消防署だった建物をリノベーションした宿泊施設で、1階には宿泊客以外も利用できるカフェ&ギャラリーが設けられ、城崎出身の画家・山田毅さんの迫力ある絵画を眺めながらコーヒーやスイーツとともに寛ぎのひと時を愉しむことができます。
「体に優しくて美味しい朝食」を他の宿で素泊まりしている方や地元の人にもゆっくりと楽しんでもらいたい、と朝8時に開店。パンコーディネーターの資格を持つ館長が、豊岡市内にある人気のパティスリー『神美堂』さんとコラボして国産小麦をはじめ地元有機全粒粉など厳選した素材で作る「からだがよろこぶパン」がモーニングの主役です。野菜、卵、はちみつ、使用するのは全て地元産のものばかり。
モーニングは1種類のお店が多い中『UTSUROI』さんではパンそのものをシンプルに味わえるトーストをはじめ、餡子を練り込んだ餡トースト、口の中でじゅわりとバターの香りが広がるフレンチトーストなど数種類から選べるのがとっても魅力的。個人的には餡トーストと珈琲の組み合わせがたまりません。
宿泊するとさらに選べるメニューが増えるそうで、いつかお泊りしてみたいなぁ・・・なんて思っています。
通りから少し奥まった静かな場所にあり、特に冬は薪ストーブの火を眺めてボーっとしていると、町の賑やかさを忘れてしまいそうに。また、広々とした気持ちのよいウッドデッキ関はわんちゃんもOKなので一緒にモーニングタイムを愉しめます。ちなみにコンセントやWi-Fiも使用OKというホスピタリティの高さ・・・。
ちなみにモーニングは宿泊客が優先なので、事前に問い合わせ&予約をお忘れなく!
UTSUROI TSUCHIYA ANNEX
●住 所:兵庫県豊岡市城崎町湯島584-1(MAP)
●営業時間:8:00~16:30(L.O.16:00)
●電話番号:0796-32-2045
●定 休 日:木曜日
●メニュー:井戸養蜂はちみつバタートースト 1540円~
もう1軒、宿泊客以外でも朝食を愉しめるのが『小宿 縁』さんです。
但馬牛の中でも特別な肥育方法で育てられる「但馬玄(たじまぐろ)」を使った料理を提供する但馬牛料理専門の宿で、1階のカフェスペース『Cafe&Bar 3rd』さんは、宿泊客以外もランチやカフェ、ディナーだけでなく、モーニングの時間帯も利用が可能です。(モーニングは要予約)。
『Cafe&Bar 3rd』さんのモーニングの魅力はそのボリューム!朝からしっかり食べたい人やブランチとして楽しみたい人もおススメです(モーニングは11時まで、L.O.10時30分)。さっくりと軽い食感の特製トースト、ソーセージ(モーニングに肉系のおかずが付くのってなかなかないです)、スクランブルエッグ、サラダ、スープ、そしてヨーグルト。地物野菜のサラダもたっぷり添えられています。
私はトーストにポテトサラダとスクランブルエッグを乗せて勝手にオープンサンドを作って大きな口でほおばるのがお気に入りの食べ方。旦那さんはいつもジャムをたっぷり塗って楽しんでいます。また、選べるドリンクは豊岡市日高町にあり、1969年創業の『但馬東洋珈琲』のコーヒー豆で淹れるコーヒーをはじめ、英国・ロンドンにある姉妹店から直送される薫り高いアールグレイなど、しっかりとセレクトされたものが揃えられているのもうれしいポイントです。
駅通りの大通りに面していながらも少し奥まっているからか、人や車の往来が気になりすぎず賑やかすぎずちょうどいい雰囲気です。暖かい時期はピロティ空間の屋外席もおススメ。
人の往来を眺めていたら思わずお久しぶりのご近所さんが通りがかり、話がはずんだりするのも楽しいひと時です。
Cafe&Bar 3rd
●住 所:兵庫県豊岡市城崎町湯島219 小宿縁1階(MAP)
●営業時間:8:00~22:00(モーニングは11:00まで、L.O.10:30、要予約)
●電話番号:070-9292-5073
●定 休 日:不定休
●メニュー:モーニングセット 980円~