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#001|「城崎温泉」の歴史にひたる

柔らかなお湯と美しい街並み
人々の優しい思いに触れる幸せ時間

豊岡の北部に位置する関西を代表する温泉街、城崎(きのさき)温泉。開湯1300年以上の歴史を誇り、なんと奈良時代から人々に親しまれているという。

かつて、道智上人(どうちしょうにん)という僧侶が、難病の人々を救うべくお経を唱え続けたところ、湧き出たと伝えられているのが、現存する城崎温泉の外湯のひとつ「まんだら湯」だったとか。

「まんだら湯のほかにも、趣の異なるさまざまな外湯があるので、ぜひ多くの皆さんに楽しんでもらいたいですね。歩いて散策できる規模の温泉街にこんなにたくさんの外湯がある場所は、そうないのでは」。

柳の揺れる温泉街をゆっくりと歩きながら、そう語ってくれたのは、「温泉寺」の住職、小川祐章(おがわゆうしょう)さん。温泉寺は、道智上人により開創された古刹。温泉街を見守るように寄り添う、大師山の中腹に本堂を構えるお寺だ。

外湯とは、公衆浴場のように誰もが気軽に入浴できる温泉のこと。城崎温泉には7つの外湯があるので、温泉をハシゴする人も多いという。

コウノトリが傷を癒した場所から湧いたと言い伝えられる温泉、天下一と称賛された温泉、泉源からお地蔵様が見つかった温泉など。それぞれに物語を携えた温泉は、建物の雰囲気も、お湯の温度もさまざま。

「かつては、入湯する前にちょっとした風習があったんですよ」そう語る小川住職が、取り出して見せてくれたのは、湯杓(ゆしゃく)。

「温泉寺を参拝してからお湯に浸かる、というのがかつての城崎温泉に入る作法で、『古式入湯作法』と呼ばれていました。湯治のために来る人も多かったので、お湯はありがたく、清らかなものだったのですね。湯杓は、『温泉寺に参拝してきました』という証として用いられていたのです」。

今でも地元の方の中には、入浴のたびに参拝し、湯杓を片手に外湯に向かう方がいるとか。

「手ぬぐいを肩にかけてね、湯杓でお湯をすくってそっと肩にかける。そうすると、手拭いがお湯を吸って、温かさが染み渡るんです。城崎温泉は湯温が高い温泉も多いので、お湯に体を慣らしていくのにもちょうどいいんですよ」

温泉につかって、体を温め、ホッとする幸せ。

1300年も前から、そんな幸せな時間を与えてくれていたこの地には、街に暮らすすべての人々で、訪れる方々をもてなす文化があるという。

「城崎で生きる人たちは、ほとんどが顔見知りです。小さな温泉街だからということも言えますが、なんといっても、何代にも渡ってみんなで協力してこの街を支えてきたことが、人の強いつながりを作っていると思います」。

古くは地震や水害に見舞われながらも、何度も街を立て直してきた歴史をもつ城崎温泉。それも、支えあう文化が当たり前のように息づく理由のひとつなのだろう。

「ここに生きる人たちは、『力を合わせて』という意識が強い。それが、『街のみんなでお客様をお迎えしよう』という、大きな想いにつながっているのだと思います。たくさんのお客様に城崎温泉の魅力を存分に味わっていただけるよう、一同お待ちしています」。

浴衣姿で外湯を巡りながら、街をゆっくりと歩き、景色を、さまざまな店を楽しむ皆さんを、街に生きる人々が共に優しくお迎えする—。
城崎温泉街には、そんなあたたかで幸せな時間が流れている。

小川祐章さん

生まれも育ちも城崎町。街の西側に位置する大師山(だいしやま)の中腹に建つ「温泉寺」の住職として、城崎温泉に暮らす人々を見守っている。

高野山真言宗 別格本山 温泉寺 兵庫県豊岡市城崎町湯島985−2

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